2012年06月07日

大野俊三ジャパンツアー八王子公演を終えて

先日、大野俊三の八王子公演を無事に終える事ができた。
果たして客席が埋まるのかと主催者としては
毎日胃が痛くて眠れぬ状況が続いていたのだが、

当日は平日にも関わらず、ほぼ満員の観客となった。

そして演奏は
『奇跡といってもいいほど素晴らしかった!』
あくまで音楽だから個人的な意見、感想となるが、
まさにファンタスティックな演奏であった。
私は舞台袖で照明を担当しながら聴いていたのだが
(ぶっちゃけ照明どころではなかった)

大野氏の奏でる『まるで光の粒のような音1つ1つ』を、共演者がもれなく受けとめ、
その光をそえぞれが自分の色や形にに変えて空中へ再び振りまいているような、
それが常に絶え間なく連続し、心地よい波動となって曲が進行していく。

そんな演奏だった。

世界的なギタリスト、ラリー・コリエルが大野氏の事を
『まるでマイルス・デイヴィスのようだ』
とコメントしているが

その意味がこの日、解った気がした。

この夜の演奏はマイルスの60年代、第二次黄金クインテットのごとき、
インタープレイとフレキシビリティがあった。

マイルスの演奏は『孤独』で『シリアス』だ。
それは彼の黒人として歩んだ人生、ジャズシーンにおける立場が
そうさせているのかもしれない。

大野氏の演奏はマイルスを彷彿とさせるが、
そのサウンドはマイルスのような
『孤独』に伴うセンチメンタリズムルは無く、
むしろその孤独は『一人立つ武士の強さ』のような
信念と強さを感じるものだ。

特に大野氏のオリジナル『Musashi』においては
大野氏の音は確信に満ち、空間をメリメリと切り裂いて
絶えず前進していくかのようであった。

その『音の剣』で切り裂いた破片を
ドラマーのシンバルが蹴散らし、
ピアノが光り輝く微粒子に変えて拡散させ、
ベースが大野氏の背中をプッシュしていく。
そんな演奏だった。

まるで壮大な冒険活劇をみているようだった。
勿論、その旅の途中には目を見張るような眩く美しい光景もあれば
不安と恐怖に支配された暗闇もある。
猛スピードで修羅場を駆けるアクションシーンもあれば
癒しの湖畔にゆっくりと寝そべる時もある。

ジャズの演奏でこんなエンターテインメントを感じるのは稀であった。
ウェイン・ショーターのバンドではこのようなドラマティックな展開はある。
役者は違うがまさにショーターバンドに匹敵するのではないかと思うほどの演奏であった。

観客のアンケートでは演奏時間についてほぼ全員が『短かった』と答えている。
そうは言っても実際は2時間を超える長尺の演奏である。
また入場料についてもほぼ全員が『安かった』である。
確かに3500円以上の演奏であった。
私なら10,000円でも安いくらいと思ったほどだ。

ただ、今回、『初めてジャズを聴きました』とか
『初めて大野俊三を聴きました』という方が多かった。
そういう意味では3500円という価格設定はやむをえなかったかもしれない。
でもそういう方が『安かった』と答えてくれた事が

私には収穫であった。

初めてジャズを聴いた人がそう感じるのである。
現在のジャズシーンにおいて大野氏がどれほど重要なポジションに立っているとか、
日本人では数少ない新主流派のトランペッターであるとか、
2度もグラミー賞を受賞している日本人であるとか、
そういう事を全く抜きにして、
まったくジャズの素人に、あれほどハイレベルなパフォーマンスをして
『また聴きたい』と評価されるのが大野俊三というミュージシャンなのである。

公演後3日が過ぎてもお客様から御礼や感想の電話やメール、
菓子折りをご持参してのご来店が絶えない。
主催者としてこれほどの悦びは無い。

最後にこの八王子公演の素晴らしい演奏を支えてくれた
いちょうホールのスタッフの皆様、
素晴らしい仕事をしてくれたPAの木村さん、
リハーサル、本番まで付き合ってくれたピアノ調律の清水さん、
当日スタッフの皆様、
そして月末の平日にも関わらず足を運んでくれた
全てのお客様に御礼申し上げます。
本当に素晴らしい夜をありがとうございました!
posted by 網 渦男 at 14:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽に関するネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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